脱石油依存として期待される新エネルギー「水素」と次世代のクルマ「燃料電池自動車(FCV)」を切り口に会場のみなさんと語り合うJHFCタウンミーティングが開催されました。水素とは? 燃料電池とは? 今後のクルマはどうなっていくのか? モータージャーナリストの清水和夫さんとカーライフエッセイストの吉田由美さんをゲストに迎え、JHFCプロジェクトメンバーと会場のみなさんが一緒になって未来について思考をめぐらせました。では、知的好奇心がくすぐられる第1回JHFCタウンミーティングをレポートします!
吉田さんの元気な挨拶から始まったJHFCタウンミーティング。まずは吉田さんが清水さんのお宅で拝見してきた「エネファーム」の話題からスタートしました。
最近よく耳にする「エネファーム」とは家庭用燃料電池システムのこと。都市ガスから電気とお湯をつくるシステムで、すでに全国で約3,000台が利用されています。清水さんのお宅では政府が推進する実証実験プロジェクトに2005年から参加され、「エネファーム」も誕生初期から利用されているそうです。
清水:「夜間に発電して朝には60℃のお湯が200リットル貯まっているんだ。発電中も音が一切ないから動いているかどうかもわからない(笑)。でもね、家のなかのモニターに表示される発電量やCO2の低減度をみると、自分で電気をつくっている感じがある。これがいいよね。」
「エネファーム」は現在、様々な企業で取り組まれ、本田技研工業(以下ホンダ)でも家庭用燃料電池の開発に取り組んでいます。
ホンダの中村さんによると、ホンダは家庭で燃料電池車(以下FCV)に水素を充填しようという発想から開発がスタート。ソーラーパネルで太陽光発電して、その電気分解で水素をつくり、家庭では熱と電気を使って余った電気は水素にして、クルマに充填する。究極のエコを目指しているんですね。
話題はFCVへ。吉田さんが日産X-TRAIL FCVを試乗させていただき、その静粛性やトルクパワーに驚いたそうです。その静寂性はまるで電気自動車EVのようだった!
清水:「FCVはそもそもEVの一種で、水素を燃料とし空気中の酸素と反応して電気をつくりながら走る。EVは貯めた電気で走る。でも、FCVもEVも最終的には電気でモーター駆動するから「二卵性双生児」みたいなものだね。」
FCXクラリティの開発担当である中村さんからは、FCVは単なるエコカーではなく、ガソリン車とは違うポテンシャルを秘めていると言います。
中村:「トルクがあって音が静かで一気にスピードも出る。FCVはガソリン車とは次元の違う面白いクルマなんです。それでいて脱炭素である代替エネルギーとして訴求ができて、最終的に人類のセキュリティに結びつくことができるんです。」
FCVは、まさに次世代のクルマ像のひとつなんですね。クルマとしての魅力と環境性能を満たしてこそ、みんなが乗りたくなるし、欲しくなります。
会場からは現在のFCVの航続距離について質問が出ました。中村さんから一回の水素充填でホンダは620キロ、トヨタは830キロ走れるとの回答。クルマとしてはもう少しで実用化できるそうです。
あとは様々なコストとインフラが問題。FCVの普及のためには水素が今のガソリンと同じ値段になり、水素を充填する水素ステーションの整備と充填する際の時間や圧力、熱の発生など技術的問題が立ちはだかっているそうです。この件をクリアにするために、現在JHFCがクルマとインフラのインターフェースを一生懸命研究・開発しています。
これらの問題がクリアできれば、燃料電池を使って水素からエネルギーを取り出すと効率(燃費)がいいので、水素の値段が下がれば経済効果も期待大! まさに水素が日本を元気にするんですね。
田島さんから化学的な興味深いお話がでました。水素は様々な一次エネルギーから取り出せる二次エネルギー。一次エネルギーとは石油などの化石燃料や石炭、原子力、太陽光、バイオマス燃料など様々な自然系のエネルギー。電気も一次エネルギーからつくり出せる二次エネルギーなのですが、貯めておくことが非常に難しいのだそうです。
田島:「電気で貯めるとなると膨大なバッテリーが必要になります。でも水素ならたやすく貯められます。燃料電池の仕組みからわかるように電気と水素は双方向の関係です。水素から電気ができるし、電気から水素もできる。だから、使いたいときに水素を電気に変えたり、電気を貯めたいときは水素として貯めることができるんです。水素と電気には親和性を感じますね。」
水素で貯めて、使いたい時に電気にする。うまく使い分ければ非常に効率のよいエネルギーになりますね。では、水素は石油に代わる次世代エネルギーの有力候補なのでしょうか?
清水:「間違いじゃないけれど、それはちょっと言い過ぎ(笑)。水素は二次エネルギー、石油は一次エネルギーだから一次と二次を比べるのは難しいよね。水素は様々なものからつくり出せる多様性をまずクリアにしていくことが先決だと思うんだ。それと、東京ガスさんは電力会社さんとコラボして太陽光発電と燃料電池を一緒にしたらどうなの?」
田島:「たしかに昼間は太陽光で電気をつくり、その電気を水素にして貯めておく。しかし、太陽光発電は太陽が出ていないと発電しない不安定なエネルギーだから、この不安定なところを安定的な都市ガスを使った燃料電池でまかなうことはできますね。」
性質の違うものを組み合わせることでお互いの欠点を補いシナジー効果をあげていく。まさにハイブリッド! 時代に即した考え方ですね。
また会場から手が挙がりました。燃料電池とバイオ燃料の違いについての質問です。田島さんが、その違いを答えてくれました。
田島:「原理から言えば、バイオマスは既存のエンジンのガソリンにエタノールを混ぜて使います。燃料電池は電気をつくりモーターをまわす。これが大きな違いです。今のエンジンを活かすのであればバイオ燃料の考え方は正しい。一方、これからの未来のクルマの進化を考えるとCO2の排出がない燃料電池は非常に魅力です。そこでバイオマスから水素をつくるという考えがあります。私の研究では日本にあるバイオマスの約50%から水素をつくり、ステーションで供給できるという試算もでています。」
あらゆるものから取り出せる水素の広がりを感じます。ちなみに石油を運べない山間地でも間伐材などを利用して水素ステーションをつくることもできるんだそうです。

モータージャーナリスト&レーシングドライバー 清水和夫さん
「NAVI」「ゲンロク」など連載多数。モーターマガジン社「清水和夫の走りの魂」など著書多数。

カーライフエッセイスト 吉田由美さん
ブログ「なんちゃってセレブなカーライフ」が大人気。雑誌CREA「吉田由美の女子的クルマ生活」好評連載中!

JHFCプロジェクトメンバー
本田技研工業 渉外部開発技術主幹 中村博さん
燃料電池自動車FCXクラリティ担当。

JHFCプロジェクトメンバー
東京ガス 水素ビジネスプロジェクトグループ マネージャー 田島正喜さん
水素ステーション開発担当。