母子家庭の人がお金を借りる方法
昨今、シングルマザーとして子育てを行う母子家庭が増えてきています。
シングルマザーの就業形態は、パートやアルバイトの人も多く、普段から余裕のない生活をしていると、急な出費があった時や子供の養育費が入ってこなかったりすると、とたんに生活費が足りなくなることがあります
そんな時はお金を借りて乗り切ろうと考えますが「母子家庭はお金を借りることが難しいのでは?」と不安に思う人もいます。
本稿では、母子家庭でお金を借りる制度や、母子家庭が受けられる支援などについて紹介します。
目次
母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用してみる
母子父子寡婦福祉資金貸付金とは
母子家庭で融資を受ける場合は「母子父子寡婦福祉資金貸付金」を申請する事をおすすめします。
母子父子寡婦福祉資金貸付金はひとり親の家庭に対して資金を貸し付ける制度で、親側が働くための準備や、子どもたちの普段の生活費、就学のための学費など様々な目的で融資が受けられます。
資金の種類 | 資金使途 | 貸付対象 |
融資限度額 | ||
事業開始資金
285万円 |
事業を開始するために必要な資金 | 母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
事業継続資金
143万円 |
現在営んでいる事業を継続するために
必要な資金 |
母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
就職支度資金
一般10万円 特別33万円 |
就職する際に直接必要な資金 | 母子家庭の母
父子家庭の父 児童 |
父母のない児童 | ||
寡婦等 | ||
医療介護資金
34万円 特別48万円 介護50万円 |
医療または介護を受けるために
必要な資金 |
母子家庭の母
父子家庭の父 児童 |
技能習得資金
月額6万8千円 一括81万6千円 |
事業を開始または就職するために
必要な知識技能を習得するために 必要な資金 |
母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
生活資金
一般月額10万3千円 技能月額14万1千円 |
知識技能を習得している間の生活に
必要な資金 |
母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
医療・介護を受ける間の生活に必要な
資金 |
||
母子家庭または父子家庭になって
7年未満の世帯の生活を安定・維持する間(生活安定期間)に必要な資金 |
||
失業期間中の生活を安定・継続するのに必要な資金 | ||
就学支度資金
小学校4万6百円 ~ 私立大学59万円 |
就学、修業するために必要な資金 | 母子家庭の母
父子家庭の父 児童 |
父母のない児童 | ||
寡婦が扶養する子 | ||
修業資金
6万8千円 特別46万円 |
事業を開始または就職するために
必要な知識技能を習得するために 必要な資金 |
母子家庭の母
父子家庭の父 児童 |
父母のない児童 | ||
寡婦が扶養する子 | ||
結婚資金
30万円 |
児童又は扶養する20歳以上の子の婚姻に必要な資金 | 母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
修学資金
月額5万2千5百円 (高校・専修学校) ~ 月額9万6千円 (大学) |
高校や大学、高等専門学校、又は専修学校に就学させるために必要な資金 | 母子家庭の母
父子家庭の父 児童 |
父母のない児童 | ||
寡婦が扶養する子 | ||
住宅資金
150万円 特別200万円 |
住宅を建設、購入、補修、保全、改築
又は増築するために必要な資金 |
母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
転宅資金
26万円 |
住宅を移転するため住宅の賃借に際し必要な資金 | 母子家庭の母
父子家庭の父 寡婦等 |
かなりの低金利で負担にならない
母子父子寡婦福祉資金貸付金の最大のメリットは、何といっても数パーセント程度の超低金利で借りられる事です。
保証人が用意出来れば無利子で借りる事が出来ますし、保証人がいない場合も1.0%(年利)で借りられます。
お金を借りる上で1番の問題になってくるのはやはり金利ですが、母子父子寡婦福祉資金貸付金はそのリスクをほとんど抱えることなく、お金を借りることができます。
融資限度額や金利については各自治体によって違ってきますので、事前に該当する市町村役場で事前に確認しておく必要があります。
返済開始まで据置期間が設けられている
さらに、母子父子寡婦福祉資金貸付金には返済までの猶予期間が設けられていますので、急いで返済する必要はありません。
資金の種類 | 据置期間 | 償還期間 |
事業開始資金 | 1年 | 7年以内 |
事業継続資金 | 6か月 | 7年以内 |
就職支度資金 | 1年 | 6年以内 |
医療介護資金 | 6か月 | 5年以内 |
技能習得資金 | 1年 | 20年以内 |
生活資金 | 6か月 | 5年~20年以内 |
就学支度資金 | 6か月 | 就学20年、修行5年以内 |
修業資金 | 6か月 | 6年以内 |
結婚資金 | 6か月 | 5年以内 |
修学資金 | 6か月後 | 20年以内 |
住宅資金 | 6か月 | 6年以内 |
転宅資金 | 6か月 | 3年以内 |
据置期間は基本的に半年から1年となっているので、低金利もしくは金利0ということを考慮すれば、かなりゆとりを持って借金を返済することができるのです。
シングルマザーの方の場合まず仕事をするための準備が必要になることもありますから、このように借金返済を待ってくれるのはとても大きな要素であるといえるでしょう。
もちろん、詳細な期間に関しては事前に聞いておくことが大事です。
条件面であとあとトラブルにならないように、しっかりと確認しておくようにしましょう。
母子父子寡婦福祉資金貸付金のデメリット
申請してから借りるまでに時間がかかる
母子父子寡婦福祉貸付金は、母子家庭や父子家庭にとって強い味方になってくれますがデメリットも存在します。
申請から実際に貸し付けが行われるまでかなりの時間を要することが挙げられます。
自治体は申請者が「貸付条件を満たしているか」という調査を行うため、申請してから最低でも1か月以上の時間がかかります。
申込から融資までの大まかな流れは、
- 市町村役場の福祉事務所などで事前に相談をします。
- 申込書類や保証人、借受人、連帯借受人などを準備しても申し込みをします。
- 申込書類や保証人などすべてがそろったところで審査になります。
- 貸付決定
- 借用書、口座振替書の提出
- 貸付金が指定口座へ振り込まれて完了です。
ちなみに、書類を提出して審査にかけられますが、この場合の審査は信用情報機関からデータ取得をするわけでありませんので、「金融事故を起こしたから借りられないかも」というような心配をする必要はありません。
この貸付制度は、申込から融資までは早くて1か月という意味であり、長引けばさらに長引くこともあるので、出来るだけ早い段階で申し込みをする必要があります。
このような形になっているため、「今すぐにお金を借りたい」という事情を抱えている人は、別の方法を模索せざるを得ないということになってしまいます。
審査基準がとても厳しいため認められないことも
審査に関しても長時間かつ厳しく行われるので、申し込みをしたからといって必ず借りられるものではありません。
母子父子寡婦福祉貸付金は好条件でお金が借りられますが、公的資金を貸し付ける制度のため、本当に必要としている人以外、審査に通らないという事もあります。
融資が受けられない事もありますので、お金を工面する別の方法も考えておかなくてはならないのも母子父子寡婦福祉貸付金のデメリットのひとつといえます。
自治体によっては連帯保証人が必須
母子父子寡婦福祉貸付金は、自治体によっては貸付条件で、連帯保証人を要求される場合があります。
連帯保証人になってくれる候補となるのはご両親が挙がりますが、お金を肩代わりさせる立場にしてしまうくらいなら、直接生活費等の援助を頼む方がいいかもしれません。
もちろん連帯保証人になってくれる人がいた場合でも、「保証人には絶対迷惑を掛けない」という強い意志が必要です。
その他のお金を工面する方法
すでに申請を済ませていると思いますが、母子父子寡婦福祉貸付金のような融資以外に「児童扶養手当」や「児童手当」の支給を受ける方法もあります。
児童扶養手当を申請する
国から支給が受けられる制度で、以前は「母子手当」と呼ばれていた手当で、母子(父子)家庭を対象にした児童扶養手当が受給できますし、申請した理由を問われる事もないので安心して申し込みが出来ます。
支給対象者となるのは、母子(父子)家庭で、0歳〜18歳に到達した最初の3月31日までの間の年齢の子供の人数に応じて支給されます。
子供の人数 | 全額支給 | 一部支給 |
---|---|---|
1人目 | 42,330円 | 9,990円~42,330円 |
2人目の加算額 | 10,000円 | 5,000円~9,990円 |
3人目以降の加算額(1人当たり) | 6,000円 | 3,000円~5,990円 |
※支給額は母親(父親)の所得に応じて決定します。
<支給要件>
児童扶養手当の支給要件は、以下の子供に対して支給されます。
- 父母が離婚した
- 父又は母が死亡した
- 父又は母が一定程度の障害がある
- 父又は母が生死不明である
- 父又は母が1年以上遺棄している
- 父又は母が裁判所からのDV保護命令を受けている
- 父又は母が1年以上拘禁されている
- 未婚状態で生まれた子供
※この他の支給要件もあります。
支給額や支給要件はそれぞれの自治体によって違うので、確認する必要があります。
児童手当を申請する
シングルマザーでなくても支給される手当で、申請をすれば婚姻中からでも支給されます。
児童手当は、「子どもにかかる生活費を支援する」国の制度で、
支給対象児童 | 1人あたり月額 |
---|---|
0歳~3歳未満 | 15,000円(一律) |
3歳~小学校修了前 | 10,000円 (第3子以降は15,000円※) |
中学生 | 10,000円(一律) |
※児童手当は所得制限世帯が設けられています。
児童手当を受ける時、扶養家族などの人数に応じて所得制限限度額が設定されています。
扶養親族等の数 | 所得額(単位:万円) | 収入額(単位:万円) |
---|---|---|
0人 | 622 | 833.3 |
1人 | 660 | 875.6 |
2人 | 698 | 917.9 |
3人 | 736 | 960 |
4人 | 774 | 1002.1 |
5人 | 812 | 1042.1 |
該当する扶養親族などの人数は、生計を共にしている子供や親、兄弟などで年間所得が38万円以下の人数と、血縁関係のない子供を養育している子供の人数の合計を指します。
もし所得制限額を越えている場合は、子供の人数や年齢には関わらず、子供一人当たりに対して月額5,000円が支給されます。
例えば、専業主婦世帯で児童が1人(=扶養親族等の数が2人)の場合、所得制限限度額は917.9万円(収入額だと998万円)ですが、扶養親族等の数が増えると限度額も引き上がります。
児童手当をもらうには役所への申請が必要で、支給はその翌月分からとなりますが、毎月支払われるのではなく、年に3回、4カ月分ごとの支給になるので注意が必要です。
ひとり親家族等医療費助成制度を利用する
母子(父子)家庭の世帯は「ひとり親家族等医療費助成制度」が利用できます。
この制度は、子どもが病院などで診察や治療を受けた時の医療費や薬代がかからないという事や、親の医療費も助成されることもあるのでこの制度を利用すれば医療費はほとんどかかりません。
ただし、助成の内容は自治体ごとに違うので、詳しい事は住民票のある市区町村で確認する必要があります。
対象となるのは「母子(父子)家庭の母(父)と子ども」や「父母のいない児童」が対象になります。
同じ病院に限って、何度受診しても月に800円以上請求されることはありませんし、7日以内の入院なら500円が上限となっています。
小・中学生の入院は全額助成の対象になりますし、薬も無料なので、母子(父子)家庭にとっては本当にありがたい制度と言えます。
一時立替にカードローンも選択肢のひとつ
「母子父子寡婦貸付制度」は申し込みをしたからと言って必ず融資が受けられるというものではありません。
また審査に落ちた人はほかの方法でお金を工面しなければなりませんし、審査に通っても交付を受けるのは1か月以上も先になります。
そんな時は、一時的にカードローンで借りるというのもひとつの方法です。
ただし、カードローンを利用する時は「一時的に不足を補う」ための借入なのか、「生活費が不足している」というような慢性的にお金に困っているのか見極める事が大切です。
一時的な借入であれば、多少金利が高くても、審査が通りやすく、即日融資が可能な大手消費者金融がおすすめですし、長期借入になるようであれば金利の低い銀行カードローンをおすすめします。
ただし、毎月の生活費の見直しを行い、「お金を借りても返済が続けられる」という状況でなければカードローンはおすすめ出来ません。
ですから、返済計画が立てられない人は、カードローン以外の方法で工面する方法を考えなければなりません。
まとめ
自分の子どもが健やかに育ち、将来的に抱く進路に関しても尊重していくためにはやはりお金はとても大事なものです。
「お金によって子どもの道を邪魔したくない」と考えるシングルマザーの方も少なく在りません。
自分だけではなく、子どもが今後も自分らしく生きていくための支援制度が用意されているので、「このような制度がある事を知らなかった」人は利用を考えてみるといいかもしれません。
子どもの成長を見守っていくためには、安心して生活できる環境をつくってあげることが重要です。