市役所でお金を借りる「生活福祉資金貸付制度」を徹底解説!

- 一生懸命働いていても収入が少なく生活がしんどい
- 急にリストラされてしまった
- 会社が倒産してしまった
- 病気や怪我でしばらく働くことができない
このようなときにあなたならどう対処しますか?
国民は最低限の文化的生活を送る権利を憲法で保証されています。
しかしこのような状況では、その文化的生活を送ることも難しいでしょう。
このようなときには、一度「市役所」でお金を借りることを検討されてはどうでしょうか。
国は公的法人である社会福祉協議会を通じて、生活困窮者の自立、および支援を目的とした貸付制度を準備しています。
それが「生活福祉資金貸付制度」です。
目次
生活福祉資金貸付制度とは?
生活資金貸付制度とは、主に低所得者、高齢者、障害者の方を対象に経済的支援を目的とした制度融資です。
経済的支援に合わせて、生活の安定化、社会参加の促進も目的としています。
全国の市区町村の社会福祉協議会が窓口となっています。
厳密には社会福祉協議会は市役所の組織ではなく、公的法人にあたるのですが、全国の都道府県、市区町村単位で組織されています。
最寄りの市役所に設置されている先も多く、そこで相談を受けることができるようになっています。
生活福祉資金貸付制度の4つの種類
生活福祉資金貸付制度は、大きく分けると次の4種類があります。
①総合支援資金
生活や住宅に対する総合的な支援を行います。
生活支援費
生活再建までの必要な費用を貸付します。
貸付限度額 | 2人以上世帯は月20万円以内 単身世帯は月15万円以内 |
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返済期間 | 10年以内 |
利子 | 保証人あり→無利子 保証人なし→年1.50% |
住居入居費
敷金、礼金など住宅の賃貸契約に必要な費用を貸付します。
貸付限度額 | 40万円以内 |
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返済期間 | 10年以内 |
利子 | 保証人あり→無利子 保証人なし→年1.50% |
一時生活再建費
技能取得・滞納公共料金の立替・債務整理の費用などを貸付します。
貸付限度額 | 60万円以内 |
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返済期間 | 10年以内 |
利子 | 保証人あり→無利子 保証人なし→年1.50% |
②福祉資金
技能習得、介護サービス、障害者支援の必要用具などに対する経費に対する総合的な支援を行います。
福祉費
技能習得・冠婚葬祭・住居移転などに必要な費用を貸付します。
貸付限度額 | 用途によって異なります。
例:出産や冠婚葬祭費用→50万円以内 介護サービスを受けるための費用→170万円 など |
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返済期間 | 20年以内 |
利子 | 保証人あり→無利子 保証人なし→年1.50% |
緊急小口資金
緊急かつ一時的に家計が維持できないときの費用を貸付します。
貸付限度額 | 10万円以内 |
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返済期間 | 1年以内 |
利子 | 無利子 |
③教育支援資金
高校、大学、専門学校などへ進学される子供に対する総合的支援を行います。
教育支援費
高校や大学、専門学校に修学するための費用を貸付します。
貸付限度額 | 高校→月3.5万円以内 大学→月6.5万円以内 など |
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返済期間 | 20年以内 |
利子 | 無利子 |
就学支援費
高校や大学、専門学校への入学時に必要な経費を貸付します。
貸付限度額 | 50万円以内 |
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返済期間 | 20年以内 |
利子 | 無利子 |
④不動産担保型生活資金
高齢者に対して、不動産を担保として貸付を行う支援制度です。
不動産担保型生活資金
低所得者の高齢者世帯に、居住用不動産を担保として貸付します。
貸付限度額 | 土地の評価額の70%程度 |
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返済期間 | 据置期間後すぐ |
利子 | 長期プライムレートもしくは3.0%のいずれか低い方 |
要保護世帯向け不動産担保型生活資金
要保護の高齢者世帯に、居住用不動産を担保として貸付します。
貸付限度額 | 土地の評価額の70%程度 |
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返済期間 | 据置期間後すぐ |
利子 | 長期プライムレートもしくは3.0%のいずれか低い方 |
どのような人が利用できるの?
生活福祉資金貸付制度は誰でも利用できるわけではありません。
実は利用できる方の条件は、かなり限定されています。
大きく分けると、次の3つの条件があります。
①低所得世帯
必要な資金を民間金融機関などから借りることが難しい世帯。
貸付制度を受けることで独立自活ができると判断される世帯。
市町村民税非課税世帯など。
②障害者世帯
身体障害者手帳、療養手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方がいる世帯。
③高齢者世帯
日常生活において療養や介護を要する高年齢の世帯。
原則、65歳以上の高齢者世帯。
生活福祉資金貸付制度は、民間金融機関のカードローンやキャッシングでお金を借りることが難しい方が利用対象となっています。
つまり生活福祉資金貸付制度は、他からお金を借りることが難しい方に対しても貸付を行うことができる、セーフティネットのような位置付けにあるといえるでしょう。
申込時の必要書類について
生活福祉資金貸付制度の申込には、どのような書類を準備しなければいけないのでしょうか?
主な書類は、次のようなものがあります。
- 申込書
- 住民票
- 健康保険証
- 収入を証明する書類
- 生活再建の計画書(休職中の方など)
- 障害者手帳(障害者保険受給者)
- そのほか資金種類によって必要な書類
必要書類は各資金種類によって異なります。
あらかじめ必要な書類を準備しておけば、手続きもスムーズに進むでしょう。
市役所に行ってから「足りない書類がある」と慌てないように、事前に確認しておくようにしましょう。
申込手続きについて
申込は社会福祉協議会を仲介して行います。
まずは居住地域の社会福祉協議会がどこに設置されているか調べてみましょう。
各市区町村役場に設置されている先もあれば、別途離れて設置されている先もあります。
場所が確認できれば、実際に訪問して相談を行いましょう。
必要条件、今後の対応などを親身になって相談してもらうことができます。
話をスムーズに進めるためには、地区の民生委員に相談するのもおすすめです。
民生委員が社会福祉協議会と連携してくれますので、手続きもスムーズに進むでしょう。
直接市役所に訪問して「条件が合わなかった」「必要書類が足りない」といった失敗を防ぐこともできます。
申込後の融資可能かどうかは手紙で返信されます。
返信には、基本的には1ヶ月程度は必要となりますので、日数に余裕を持って手続きを進める必要があります。
即日融資は可能?
生活福祉資金貸付制度は、申込から実際に貸付を受けるまでは、1ヶ月程度を必要とします。
生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金貸付制度を利用することで、申請から1週間程度で借入することはできますが、それでも民間金融機関のように「即日融資」を受けることはできません。
緊急小口資金貸付制度は、当面の生活資金を融資する制度です。
借入限度額は10万円以内で、最高2ヶ月の据置期間後12ヶ月以内に返済しなければいけません。
無利子で利用できる緊急的制度です。
緊急小口資金も含めて、民生委員に事前に相談すれば、手続きもスムーズに進めることができます。
金利はどうなの?
生活福祉資金貸付制度の金利は、利用する資金種類によって異なります。
最も代表的な総合支援資金の利子は以下のようになっています。
- 保証人あり→無利子
- 保証人なし→年1.50%
他の資金種類でも無利子、もしくは民間金融機関の金利に比べてもはるかに低い金利(利子)で利用できるようになっています。
返済義務はあるのか?
生活福祉資金貸付制度は生活困窮者に対する制度融資です。
つまりあくまで「貸付」であり、必ず返済しなければいけません。
したがって返済可能な収入がなければ、いくら生活が困っていても利用はできません。
一時的な失業や休業のケースでは、返済方法を据え置く処置も可能です。
しかしそれでも据置期間が経過後には、返済計画に従って返済を履行する必要があります。
それまでに生活面を立て直す必要があるのです。
多重債務で返済できないという方は、債務整理などを検討する必要もあるでしょう。
当然ギャンブルなどでお金がないといっても 支援を受けることはできません。
無職でも利用できる?
生活福祉資金貸付制度は生活困窮者の自立支援を目的としています。
しかしあくまで貸付制度ですので、返済義務があります。
したがって無職の方は、返済原資がないため利用することはできません。
自ら働く意思の無い方の利用を認めることはありません。
急な勤務先倒産やリストラされた方は、ハローワークで求職活動を行い、失業してから2年以内に申込申請を行う必要があります。
その後社会福祉協議会が計画した就職支援相談を行い、計画に沿った求職活動を行うことで、現在無職の方でも利用できるのが条件となっています。
また生活福祉資金貸付制度は失業保険給付金との併用はできないようになっています。
つまり市役所からお金を借りるには、失業保険給付金が終わってから申し込む必要があります。
生活の困っている方をサポートする制度ですので、無職のような状況を何とかしてほしいというのが本音でしょう。
しかし無職の方が相談に行くと、まずは失業保険の給付と、ハローワークなどを通じた求職活動を求めるケースが多いようです。
生活保護と併用できる?
生活福祉資金貸付制度は、生活保護者でも利用できます。
生活福祉資金貸付制度は個人住民税がかからない生活困窮者を対象としているのがその理由です。
生活保護受給者には、個人住民税がかかりませんので、併用が可能になっています。
しかし生活保護はあくまで生活の用に供する費用に充てる制度です。
例えば、借金返済などに生活保護を利用することはできません。
つまり借金を抱えている生活保護受給者は、必然的に公的制度である生活福祉資金貸付制度も利用できないことになります。
審査は厳しい?
生活福祉資金貸付制度の審査ですが、意外と厳しく判断されるようです。
生活困窮者を対象としていますが、返済能力がないと判断されると門前払いを食らうことも少なくないようです。
否決とされる一番の理由は「多重債務」です。
借金の返済に追われるいる方は、まず利用できませんので債務整理などを検討する必要があるでしょう。
すでに債務整理を利用されている方に対しては、社会福祉協議会により判断が分かれるようです。
貸付を返済できるかどうかを判断してのケースバイケースとなっています。
失業中の方は、失業保険が優先されるので利用はできません。
失業保険給付が完了した方に対しては、今後の再就職活動などで返済可能な状況を作り出せるかどうかが判断材料となっています。
いずれにしても審査は厳しく判断されるようですので、しっかりとした生活再建策が必要となるでしょう。
メリットとデメリット
生活福祉資金貸付制度を利用する際の、一番のメリットは低金利でお金を借りることができるという点です。
無利子、もしくは民間金融機関に比べてはるかに低金利で利用できます。
生活に困っているという方は、それだけ返済負担も少なく利用できるわけです。
一方、利用条件がかなり限定されているのがデメリットです。
また、手続きも難しく、申請から貸付実行まで1ヶ月以上必要となります。
審査もかなり厳しく、借入までには狭き門となっています。
相談の上、申込を検討しよう
生活福祉資金貸付制度は、生活困窮者の支援と自立を目的とした制度です。
まだまだ認知度が低いようで、市役所からお金を借りることができると知らなかったという方も多いようです。
しかし生活に困窮しているからといっても、借金を繰り返す、仕事をする意思が無い、生活を立てなおすつもりが無い、という方は利用できません。
「本当に現状を打破する気持ちがあるのか」が重要だということです。
その気持ちがある方は、一度地域の社会福祉協議会に相談してみましょう。
また地区の民生委員に相談してみるのも有効です。
それにより手続きもスムーズに進めることができます。
いずれにしても、自分自身の「なんとかしたい」という強い意思が大切です。